つくる
エンタメ専門社労士事務所
Creative Workforce Support
働く人のためのメンタル不調 休職・復職ガイド
Chapter 2 — The first meeting
休職に入る前の面談は、体調を確かめる場ではありません。
手続きを決める場です。
場面 1 / 共通の事実
最初の面談の最大の目的は、手続き上の必要事項の整理です。業務の引き継ぎや原因追及を詰問する場にしてはいけません。本人が不安と罪悪感を感じやすいタイミングです。安心感を与えることが、円滑な休職スタートと将来の良好な復職への第一歩となります。
経営者・人事
聞くのは、手続きに必要なことだけです。
逆に、深追いしないでください。病名の詳細。原因。家庭の事情。これらは、本人が話す分にはかまいませんが、こちらから掘るものではありません。病歴は、本人の同意なく集めていい情報ではありません。
休職に入る前の段階で、会社が万が一の「音信不通リスク」に備えて家族状況や緊急連絡先を確認することは、安全配慮義務および危機管理の観点から非常に合理的です。ですが、遠くの実家で療養する方も居れば、一方で同居の家族にも隠している方も居ます。本人の意向を無視して会社が家族に連絡・病状説明を行うと、個人情報保護法違反やプライバシー権の侵害として会社が訴えられるリスクがあります。緊急連絡先の確認時に、緊急連絡時の注意点も併せて確認してください。
面談は短くしてください。30分を超えると、それ自体が負担になります。
そして、決めたことは書面にして渡してください。この時期の本人は、口頭で聞いたことをほとんど覚えていられません。
休職開始時説明チェックリストをダウンロード →働く方
この面談は、評価したり、原因の追究や、復職を責めたりするためのものでありません。安心して休むための手続きを一緒に行う場です。体調をすべて説明する必要もありません。もし伝えたいことがあれば、伝えておくのは構いませんが、無理に話さなくても大丈夫です。
以下を確認しておければ十分です。
休職時、会社からの連絡手段として、緊急時への備えで、家族などへの連絡先を確認される場合があります。もし家族には絶対に連絡しないでほしい事情がある場合は、その旨も伝えておくと安心です。
体調面でも、説明されたことを全部記憶しておくことは難しい状況なので、決まったことを書面でもらってください。あとで確認しましょう。
場面 2 / 共通の事実
病名を、本人の同意なく周囲に伝えることはできません。
ただし、不在の説明は必要です。
経営者・人事
周囲に必要な情報は「いつまでいないか」と「誰が代わるか」です。理由の詳細ではありません。「体調不良のため、しばらく休みます。担当は◯◯が引き継ぎます」で足ります。
何をどこまで伝えるかは、本人に確認して決めてください。面談のときに一緒に決めておき、決めた範囲を伝えます。
周囲への説明がないと憶測が広がります。逆に、本人と決めた以上のことが広がっていると、復職したときに差し支えます。本人のプライバシーを守った、必要範囲での同僚への情報開示をしてください。
働く方
病名を職場に知らせる義務はありません。
何をどこまで伝えるかは、あなたが決められます。「体調不良」だけで問題ありません。
ただ、何も伝えないという選択には、副作用があります。説明がないと、周囲は自分で理由を想像します。戻ったときに、そちらの方が居心地が悪くなることがあります。誰に、何を、どこまで伝えるか。面談のときに、会社と一緒に決めておくと安心です。
場面 3 / 共通の事実
経営者・人事
無期契約の辞職は原則として会社の承諾を必要としませんので、この辞意の意思表示は有効です。ですが、調子が落ちているときの意思表示は、あとから争いになることがあります。
受理しないのではなく、判断できる内容をもっても意思が変わらないか確認することです。
伝えるのは、判断材料です引き止めすぎるのも問題です。辞める自由はあります。材料を渡して、期間を置く。それ以上はしません。本人の意思が変わらなければ、そのときに手続きします。
働く方
いま決めないでください。
調子が落ちているときの判断は、平常時の判断と別物になりがちです。
知っておいてほしいことが、3つあります健康保険から傷病手当金が出ます。給与のおよそ3分の2です。
ただし条件があります。在籍時に受け始めていることが条件のひとつです。受け始める前に辞めると、この条件を満たせません。
失業給付は「働ける状態の人」が対象です。療養中は対象外です。ただし、受け取れる期間を先延ばしにする手続きがあります。これをしておかないと、回復したときに受け取れなくなることがあります。期限があります。
辞めてから知った、という方が本当に多いです。辞めるという選択もありますが、確認してから決めても間に合います。
場面 4 / 共通の事実
この時期に口頭で伝えたことは、ほとんど記憶に残りません。
経営者・人事
休職の通知は、書面で渡してください。入れるのは5つです。
説明したかどうかではなく、渡したかどうかが記録になります。
本人が読める状態にないことも多いので、家族が見ても分かる書き方にしておくと安全です。家族用として、2部渡すとより安心です。
働く方
決まったことは、書面でもらってください。
口頭だけだと、まず覚えていられません。この時期は、それが普通です。
もらっておくもの。
家族に渡しておいてください。手続きの期限を、自分ひとりで管理するのは難しい時期です。
場面 5 / 共通の事実
診断書が出たら必ず休職、ではありません。
働き方を変えることで、続けられる場合があります。
経営者・人事
選択肢は、休職か退職かの2つではありません。診断書の記載が「業務の軽減があれば就業可能」となっていた場合、いきなり休職に入れるのは適切ではありません。
こういった対応も考えられます。ですが、軽減業務であっても、出勤すること自体が強いストレス(職場環境や人間関係が原因の場合)になっていることもあり、働かせ続けることで症状が悪化する恐れがあります。
主治医が言う「業務軽減」が具体的に何を指しているのかは、あやふやなことが多いです。産業医面談を実施し、自社の業務において、どのレベルの軽減なら安全に働けるかを判定してもらうのがベターですが、少人数の会社では、業務を減らす先がないことがあります。プロジェクト単位で人が動く現場では、軽減した状態で入れる案件が存在しないこともあります。
もし、「安全を確保できる軽減業務がない」「産業医から見ても休んだ方がいい」となった場合は、合意形成を経て休職に移行してください。
働く方
診断書が出ても、必ず休職になるわけではありません。
働き方を変えることで、続けられる場合があります。時間を短くする。残業をやめる。担当を変える。主治医に相談してみてください。「休むほどではないが、この条件なら働ける」という診断書が出ることがあります。ただし、会社の側でできることには限りがあります。
小さい会社では、代われる人がいないことがあります。断られたとしても、あなたへの評価ではありません。
それから、ひとつだけ。無理な条件で続けると、結局あとで休むことになります。そのときには、体調がもっと悪くなっています。続けるか休むかは、気持ちではなく、環境の状況で決めてください。
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